時々見せる、

 この顔に弱いんだよなぁ、私。

 ずるいな、流川。



「…おやすみ」


 返事して。

 体をひるがえす。


 とぼとぼ歩いて、

 自分の電車のホームへの階段前。


「ふぅ…」


 ため息をつきながら、ふと振り返ると。


「あ…」


 真っ先に階段を上って行ってしまうはずの流川の姿。

 まだ、その場所にいて。

 見送ってくれていた。


「流川…」


 立ち止まって小さくつぶやくと。


『はやくいけ』


 流川の口が、そう動くのが分かった。




 手を振ると。


 流川の腕もあがった。




 ホームに出ると、乾いた涼しい風。

 ちょっと熱い、私の頬を滑りぬけていって。


『結構楽しみだし』


 流川のセリフを思い出しながら乗り込む電車。


「はっ。そういえばパンツも洗われたんだった」


 急にそんなことも思い出して。


「すけべ。バカ。変態」


 繰り返していると、可笑しくて。


「あのブラジャー、変形しちゃったからなぁ、流川のせいで」


 

 …どこで買ったんだっけ?


 なんて考えてる私。




 …イケナイ、イケナイ。




 

 早く明後日にならないかなぁ。





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◆あの日あの時
4.唯衣編「免許と煮玉子」了
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