改札を抜けて。

 流川の電車のホームへの階段前。


「お前さ、まだ腹出して寝てんの?」

「…出してないよ」

「風邪ひくぞ、涼しくなってきたし」

「出してないってば」

「熱出して旅行っていうのも辛いからな。ちゃんと布団かぶって寝ろよ」

「わかってるって」


 他に言うことないのか、この男は。


「結構楽しみだし」


 え?


「変な下着つけてくんなよ」

「つ、つけませんっ」

「俺が洗濯した、あれ」

「…洗濯?」

「あれの方がいいぞ、まっピンクのブラジャーよりな」

「あ」


 思い出した。

 流川に洗われた、小さいリボン付きのシンプルなピンクブラジャー。

 なんか…カップが歪んじゃってたけど。

 どんな洗濯したんだ、コイツ。


「あれの方がって…っていうか、何で流川が私の下着に注文つけんのっ。スケベっ!」

「注文じゃねーよ。正直な感想を言ったまでだ」


 赤くなる私を見て、ふふんと笑った流川は。


「じゃーな」


 もう一度私の頭に手を置いて。


「おやすみ」


 やんわり微笑んだ。