駅までの帰り道。

 並んで歩く隣りの流川は、お腹をさすっている。


 薄紫色の雲が広がる空。

 街路樹の葉は黄色に染まって、この街にも秋の気配が漂っている。


「もう二ヶ月経つんだね、あれから」

「ああ」

「早いね」

「ああ。早いな」


 時々、カラカラと音を立てながら足元を過ぎていく枯れ葉。

 秋は、ちょっとだけ寂しい。

 そして、ほんのちょっと、人肌が恋しい。


 流川の手に、自然に自分の手が伸びてしまって。


「あ。ごめん」


 にぎった手を慌てて離すと。


「別にいーし」


 一度離れたその手が、伸びてきた。



 手をつないで歩く歩道。

 駅までの距離がすごく短く感じられて。


「じゃーな。気をつけろよ」


 見おろす顔を見つめると、急に寂しくなる。


「なに泣きそうな顔してんだよ」

「…別に」

「玉子、食い足りなかったのか」

「違うし」


 流川のバカ。


「またすぐ会えるだろ」

「…へ?」

「明後日だろ、旅行」

「あ、うん」

「急な予定立てすぎだ、お前」

「ごめん」

「カエル、連れて来いよ。久しぶりに顔みたいし」

「うん」


 流川は。

 ぽん、と私の頭に手を置いた。