俺の前で縮こまって、

 情けなそうに口を結んでいる。


 …何だよ。

 心配して来たのか、マジで?


 だったら、

 外に出る前に電話して確認すればいいだろうに。


 不器用なんだな、コイツ。

 いや、意地っ張りなだけか?


 …誰かに似てるな。


「どれ、帰るぞ。送ってやる」


 ふん。

 このまま一人で帰らすわけにもいかねぇだろ。

 
「ま、待って」


 慌てて追いかけてくるコイツを送りながら、

 俺の頭の中は、部屋に戻ってからのセリフを探していた。



 部屋に戻り。


「じゃーな」


 まあ、賭け、みたいなもんだった。

 これで普通に「じゃあね」と返ってくるか、それとも…


「あ、上がってコーヒーでも飲んでいけば?」


 …ぶ。

 勝ったな。


 コーヒーを俺に渡しながら、


「ありがと…」


 呟くコイツ。

 
 素直じゃん。

 「心配してくれたのか?」

 聞くことの出来ない俺は、素直じゃねーよな。


 それより。

 歩きながら、考えていたセリフ。


「契約しようか?」

「契約? は?」

「お前、俺のことレンタルしろよ」


 丸めこまねぇとな。

 こうでも言わねぇ限り、

 コイツは意地をはって「いいから出てって!」なんて言うんだろうし。