必死に走る、アイツの靴音。

 携帯を耳から離したんだろうか。

 その声や息遣いまでは聞こえない。


 アイツの靴音に急かされるようにして、俺の足もいつしか走り出していた。


 電話の向こう、微かに音楽が聞こえてくる。

 コンビニに入ったか?

 無事なのか?


『も、もしもし…流川…?』


 ぜぇぜぇとアイツの声が聞こえた。


「逃げ切れたか?」

『う…うん…く、苦しい…』


 …ったく。

 
 コンビニの明かりが見えてきた。

 先を急ぐ。



 
 コンビニに入ると。

 棚の陰から様子をうかがうようにしてこちらを覗くちっちぇオンナ。



 居たわ…

 …ったく。

 俺を走らせるなんて、大したヤツだ。


「アホ」


 何で、お前より俺のほうが汗かいてんだって話だ。


「お前さ、自分で言ってたろ、最近変なヤツうろついてるって。なのにこの時間に外に出るなんて、はっきり言ってアホだろ」


 一気にそう言ってやると。


「だ…だって……し、しんぱ…」


 言いかけて、口をつぐんでやがる。


 しんぱ?

 もしかしてコイツ、


 俺のこと心配して出てきたのか?