(あの頃は、自分がこっち側に座るなんて思ってもみなかったな…
でも、初めてこっち側に座るのが、まさか妹の入学式になるなんて……そんなの思ってもみなかったな…)
そんなことを考えながら、前の方に座ってる那津を見てみると、頭が前後に揺れていた。
(え…?那津、何であんなにも揺れてるんだろう…?)
ジーッと見ていてハッ!とやっと気づいた。
(もしかして…寝てる?)
再びジーッと見ていると、今度は横に倒れそうになっている。
雅人「…あ!」
少し声にもれてしまい、周りに座っている人がこっちにいっせいに見てきた。
雅人「あ、すみません…」
謝ってから、もう一度那津の方を見ると、さっきの倒れそうになっている位置のまま寝ているみたいだ。
(な、なんて器用なんだ…あのまま倒れないといいんだけど…)
と、ハラハラしていると、
「それでは、これにて入学式を終わります」
その声で目が覚めたのか那津は、軽く伸びをしていた。
はぁ……と思わずため息をこぼした。

