「ねぇ聞いて!
私ったら今日も告白されちゃって!でも、潔癖性だからそういうお付き合いは無理って言ってるのに、今回の男は全然引き下がらないのよ!
大体、潔癖性って言ってんだからさっさと諦めなさいよねっ。」
何時ものように、学校では決して言わない愚痴をたんまりと伊吹に聞いてもらう。
いつも伊吹は、黙ったまんまで静かに私の話を聞くだけ。
時刻は午後六時。
「ねー。伊吹。お腹空いたわ。」
「うん。家帰りなよ」
「違うの、そういうことじゃないのよ!
何か食べるものはないの?」
伊吹は、爽やかで優しい。
学校の男子みたいに、凶暴じゃないし変態でもないし、気遣いも出来る。
でも…
「何もないよ。
それより俺、今からここで着替えるよ?
だから、さっさと出てけって。
知らねーよ?由乃、倒れちゃうかも」
少し、話し方が変わる。
これは、伊吹が自然体になってきた証拠。
ちょっと憎たらしいけどこれはこれで格好いいから許すわ。
「なっ。倒れるわけないでしょう!?
私を誰だと思ってるのよ」
「学校一可愛い由乃ちゃん」
「そうよっ。私が倒れるなんて、あり得ないんだから!だ、だから、安心して脱ぎなさい!」
「…なんか、言い方エロい」
「えっ、えろっ。うるさいわねっ。」
…全くっ。私を何だと思ってるの!?
そう心の中で不貞腐れて、落としていた視線を再び伊吹に戻すと。
「なっ!なに脱いでるのよ!
ここはリビングよ!?伊吹の馬鹿ッ」
「いや。お前が脱げって言ったんじゃん」
「言ったけど……言った、けど。」

