この学校に入学して、もう半年だけど、今や私の存在は学年内にとどまらず他学年にまで知れ渡っているみたい。



でも、私が自分をお姫様だと自覚していることは、誰にも秘密なの。


知っているのは、小学校からの友達である風と、あともうひとりだけ。



「まさか、学校のお姫様がこんな猫かぶりで、しまいには潔癖症ってのも嘘だなんて、一体誰が思うのかねー。」



教室には、クラスメイトがわちゃわちゃ居るというのに、普通の声の大きさで話す風の口を慌てて抑えた。



「ちょっと!声が大きい!
誰か聞いてたらどうするのよ!?」


「誰も聞いてなんかいないって。
あんたの自意識過剰も中々の重症だね」


「それは元々だからしょうがないのよ。でも、もしも、皆のお姫様である私が、とんだ猫かぶりだって知られたら……」


「…自意識過剰っていうのは、否定しないのね。」



「だから、声が大きいわっ。」



はいはい。と呑気な返事をしながら、いちごオレを飲む風をじとっと睨みながら、私はむっとした声で風に言い聞かせる。


すると廊下から、男子の大きな笑い声が聞こえた。


見ると、先程のモテモテ男子の集団が話している。私に手を振っていたのは三人だったけど、また人が増えてきたみたい。


「イケメンな人は数人だけど、皆オーラが出てるわね。」


風は廊下を見ながら、世の中不公平ね。と、呟いた。


確かに、あの六人ほどの集団はパッと目を引く容姿を持ち合わせているわね。


そして、私の目は自然と、主に大きな声で笑っている男子よりも、その横にいる少し大人しそうな男子に向いてしまう。



地味なわけではないけれど、他の五人に比べると、まだ控えめな方で、自然と大人しく見えてしまう。