伊吹だって健全な男子高校生なんだし、いかかわしい本の一冊や二冊ぐらいはあってもおかしくないはずよね。
適当に本棚などを漁ってみるけど、そういうものらしき本は見当たらない。
「ふぅ。 伊吹ってば、隠すのが上手いわね…?でも、私は簡単には諦めないんだからね!」
そう呟いて不意に後ろを振り返ると、
「あのさぁ。そんな事でわざわざムキにならなくてもいーから。」
そこには呆れたような顔をした伊吹が立っていた。
「何勝手に部屋入ってんだよ。」
学校では絶対に見せない顔と態度。
うん、これでこそいつもの伊吹ね。
「別にいいじゃない!減るものじゃないんだから。 ケチな男は嫌われるわよ?」
「それとこれとはまた話が別だろ」
「大体、伊吹が私を置いてヘンテコな本を読んでいたからでしょう!?」
「何、俺のせいなの?
しかもヘンテコって…まぁ、お馬鹿な由乃には分かんないか。」
「…お馬鹿ですって?」
「うん。お馬鹿。
ホント、可哀想なくらい…馬鹿」
伊吹は心底残念そうな顔をして"馬鹿"を連発する。
その顔、ものすごくむかつく!

