「それより、早く残り食べなよ。
冷めてももう作らないから」
「はぁーい。」
渋々、残りのフレンチトーストを頬張る。…悔しいけど、やっぱり美味しいわ。
伊吹は料理が上手で、特にパンケーキ類はもう神業。
私は、伊吹の作ったパンケーキしか食べないの。
「…やっぱり、美味しいわ。」
悔しいながらもそう言うと、伊吹は柔らかく笑って「ありがと」と言うと、私の隣に腰掛けた。
フレンチトーストを食べる私の横で、伊吹は本を読み始めた。
これも、いつも通り。
伊吹は、本を読むのが好き。
初めは、学校でのキャラを作るために読んでいるのかと思っていたけれど、家でも読んでいる辺り、違うみたい。
静かに本を読んでいる姿は、女子に騒がれているだけあってとても絵になる。
やがてフレンチトーストを完食して、暇になった。
「ねぇ、伊吹。暇だわ」
「……」
伊吹からは、話し掛けないでオーラが出ているけれど、私はそんな事お構いなしに伊吹の読んでいる本をチラリの覗き込んだ。
「何なの、この本は。
どうして、こんなヘンテコな本読んでるのよ〜」
覗き込んでは見たものの、さっぱり何が書いてあるのか分からない。
何語なの、あれは?
日本語?日本語ってあんなに難しいものなのかしら。
「伊吹。ねぇ、暇よ。」
決して聞こえていない訳では無いのに無視し続ける伊吹の服の袖をくいくいと引っ張る。
まぁ、こんなのは承知の上なのだけれど。

