1人ぼっちと1匹オオカミ(下)


 店員さんの声にカップルさんたちが並び始めました。その列の中にはげっそりした顔の彼氏さんがいます。
 どうやら隣の彼女さんに逆らえないようですね…。不憫です。

「晴野、並ばね?」

「え!?い、いいですけど…」

 神野くんの言葉で並ぶことになりました。

 1組5回までで次の組と交代だそうです。ついでに商品は全部で5個あります。

 前の人たちの様子を覗き見ると、なかなか難しい様子です。アームの引っかける爪の部分の角度が広いようです。

「神野くんは得意なんですか?」

「ん…まぁまぁかな。晴野、わりぃんだけど両替行ってくれね?」

「おまかせください」

 神野くんから2000円を受け取って、このイベントのお兄さんが500円玉に代えてくれました。
 それを持って神野くんの元に戻ると、あと5番目くらいになっていました。ついでにまだ誰も取れている様子はありません。