「晴野、やめろ」

「意味分からないじゃないですか。私を産んだ人は私がいらないのに、いなくなったらどうでもいいのに、今さら必要になったから?もし私が死んでいたら、その代わりをどこからか連れて来るのに?…だったら、私である必要なんかないじゃないですか。どうせなら、自分の手で消せば…」

「晴野!!」

 振り返らなくても、神野くんが怒っていることが簡単に分かる。

 でも、心のどこかで信じていたのに。
 経済的な理由やどうしようもない理由があれば、まだ許せたかもしれないのに。

 幸せである自信はある。
 でも、私をこの世界に生んだ人から否定されるのはつらい…。

 勝手に涙が頬を伝う。
 泣きたくないのに、勝手にあふれて止まってくれない…。

 不意に引き寄せられて、後ろから抱きしめられる。
 私を包む腕は苦しいくらいに強くて、震えていた。