「…朔夜さん…」
「すぐ戻ってこい」
許可をいただいたので階段を駆け降りて、男の子の元へ行くと、男の子は抱きついてきそうな勢いで手をつかんできました。
いや、正確には抱きつこうとした直前に何やら寒気が襲ってきたので、我に返ったという感じでしょうか。
男の子の手は汗びっしょりで、ガタガタ震えています。
そりゃ、見習いのような立場の子が幹部に命令だなんて出来ないですよねぇ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです。死にそうです」
「うん、死なないでくださいね。…あの、…」
焔さんたちに聞こえないように男の子の耳元でこそこそ話です。男の子は目をまん丸くさせましたが、戸惑いを示す一方で目がキラキラしています。
ポンっと背を押すと男の子はピンっと背筋を伸ばして焔さんに向き合いました。
そして、深呼吸すると意を決して口を開きます。


