静寂が会場を包む。でも、ドンッと言う音と共に立ち上がったのは血走った目をした関口だった。

 その目は私をまっすぐに射抜いてくる。

「お前は…お前は何者なんだ!!どうして赤の他人のために、ここまでする!!」

『…依頼、だから』

「嘘をつくな!!晴野蓬とどういう関係だ!なぜ、私の立てた完璧なシナリオを打ち崩した!!」

 唾を飛ばす勢いで口を開く関口は、完全に刑事としての顔はしていなかった。
 そこにいたのは、ただの犯罪者だ。

 あれが完璧なシナリオなんて、笑わせてくれる。

『…そういや、ここで名乗ると約束していたな』

 関口は血眼で私を睨みつけてきているけど、父親は正体が知りたいというように顔を上げていました。

『赤の他人ね…。他人と言えば、他人なのかもな』

「何を言ってる!」

『…でも、他人なんかじゃない』「…だから、ここまでした!」

 ポケットに入った変声機の電源を切る。

 その瞬間、父親の目が見開かれた。