会場が緊張に包まれる。神野くんは用意されたパソコンを立ち上げて、準備しています。

 雷斗くんは私に誰も近づかないように目を光らせています。

 向こうは準備が整っているのか、ただ黙ってこちらを見つめていました。

「ん?…おい、何だこれ!」

 神野くんが声を上げると、一緒にパソコンの画面を覗き込む。

 見ればUSBに入ったデータのすべてを消し始めているじゃないですか!慌てて引っこ抜きましたが、おそらくデータが消えた。

 すると、対面した席に座る父親が余裕を取り戻してるじゃないですか。

 どれだけ姑息な手を使えば気が済むんでしょうね。

「どうかしましたか?」

 確信犯のくせに!その嘲笑うような顔しないでくれませんか?

 試しにもう1度USBをさしてみても、やっぱりデータはほとんど残っていませんでした。

 軽くパソコンのプログラムを見てみると、USBの消去プログラムが組んであるじゃないですか!

 もう、呆れるしかありませんね。