「…誰だお前」

「…蓬です」

「はぁ!?」

 目の前に立つ神野くんが驚いて固まってしまいました。まぁ、仕方ないですよね。

 なんて言ったって、私の今の格好は櫻高校の女子用の制服を着崩し、金髪で化粧しているんですもん。

 簡単に言えば神野くんが罵声を食らわしている方々と似たような格好です。

「マジで…?」

「大マジだけど?あ、媚び売った方がらしく見えますかね」

「きもい」

 ズバッとひと言で切り裂かれました。

 分かってます。分かってますけど!
 演技なんですからもうちょっとオブラートに包んでほしかったです。

 しょぼんと縮こまっていると、神野くんはごめんと言いながらも一切近づこうとしません。

 うぅ、変装とはいえやめとけばよかったです…。

 でも、こうでもしないと無事にたどり着けないって判断したんですよね。

 ついでのリュックの中には黒パーカーとズボン、ダークブラウンの短髪のウィッグも入っていますよ。もちろん化粧落としも。
 会場でこっそり着替えてやろうという魂胆です。