「お前が…俺らが1番わかってるはずだろ。
 本当の親に愛してもらえないのがどれだけ辛いか。

 お前は、子どもを見て怖がらないと言えるか?成長した子どもにもしあいつの面影が見えても愛し続けられるか?

 怖かったんだろ?ずっと泣いてたんだろ?」


「…」


「お前のお腹にいる子どもは、お前を苦しめた奴の子でもあるんだ。

 その子を、一生愛し続けられると言えるのか?その子にあいつを重ねて苦しむことはないって言いきれるか?」


「…」


「降ろすのが、正解だって言えない。

 でも、将来のことを考えたら、産むって言うのも正解だって言えない。

 確かに、産んでみなきゃわかんねぇ。
 でも、産んでからじゃ、遅いんだよ。

 その子が晴野にとって、その子がいるのも、いなくなるのも苦しいのは分かる。

 でも、俺は、お前がちゃんと笑って子どもに向き合えなくなるのが怖い。子どもが愛されなくなるのが怖い。だから、お前に産めって言えない」


「…かみや…くん」


「支えるって言えなくてごめん。守れなくてごめん。助けてやれなくてごめん。苦しませてごめんな。

 …一緒に背負うから、お前の傍に一生いる。

 だから、今は…」