「最後に、言いたいことはありますか?」

「はい。…事実にないことを次々に言われ、夫と娘を取り上げられました。絶対に許しません」

「すみません。ひと言いいですか?」

 裁判員の1人が手を上げると、それを許可されて、その人はお母さんを睨みつけました。

「娘を取り上げられたと言いましたが、それは被害者家族の言葉ではないですか?あなたは加害者の側ですよ。私はあなたが逮捕されないことにも疑問を感じています。被害者家族をこれ以上苦しめないでください!」


『…何にも知らねぇくせに…威張ってんじゃねぇよ!!』


 我慢、出来なかった。

 何も知らないくせに、無責任な言葉を吐いたこの人が許せなかった。

 傍聴席で声を張り上げた私に、驚いたような視線が一斉に向けられる。
 でも、その視線も避難の目に変わっていく。

 剣人さんやお父さん、お母さんたちが焦ったような表情を浮かべるけど、怒りをコントロールできなかった。