裁判官が入って来たことで、検察官もお父さんも、そして傍聴席にいる全員が立ち上がり、裁判官の礼に合わせて一礼する。

 裁判官が席に着くと、全員がぞろぞろと座り出す。

「これより開廷します。被告人は前へ」

 裁判官の低く、重圧的な声が響く。
 お父さんはその声に合わせて動きだし、証言台に立ちました。

 裁判の流れのままに淡々と進められていく。

 被告人の本人確認、そして検察官の起訴状の朗読が終わると、裁判官はお父さんを睨むように見つめる。

 一応の形式で黙秘権が認められることは言っているけど、この裁判官、完全にお父さんを軽蔑してる。

 こんな状態で公平だと言えるんでしょうか?

「今読み上げた事実について、何か言いたいことは?」

「私は、蓬を誘拐、監禁などしていません」

 はっきりと告げたお父さんに対して、裁判官の目が一瞬鋭くなる。

「弁護人からはどうですか?」

「私も被告人と同意見です」

 弁護士もはっきりと告げると、裁判官の顔がなぜか呆れのような色が浮かぶ。

 …この人、本当に大丈夫なんでしょうか。