「…妊娠してるかもしれないのにやるんですか」

「ううん。蓬が安心できればいいなぁって」

 なら一刻も早く離れて私の目の前から消えてください。

 そんな私の気も知らずこの人はベッドに座ると私を抱きしめ続けます。

 まさか寝るとでも思っているんでしょうか。名前さえ知らない男性の腕の中で?

 …ありえません。

「蓬は僕のこと、好きになってくれた?」

「…無理矢理抱かれて、したくもないことを強要されて、そんな人を好きになると思います?」

「…ごめん。でも、僕には蓬が必要だから」

 あなたが必要なのは、父親の血でしょう?ううん、父親の権力を貰い受けるための道具が必要なんだ。

 黙っているとこの人は何を勘違いしたのかいきなりキスをすると、ベッドに押し倒してきました。

 …今、嫌だとはっきり言いましたよね?この人はあほですか。

「退いてください」

「やだ。僕も蓬に甘えたい」

 そう言いながらも既にこの人の顔は私の胸に埋めていました。意味、不明です。

 それだけに飽き足らず、動き出した手にまた我慢するしかないんだときつく目を閉じる。

 もう、見たくない。聞きたくない。感じたくなんかない。