やっとわかった。

 父親は私を利用して会社を続けていける有能な人を欲しがっていたんだ。
 そして、自分の血が途絶えないように子を作らせてその子を次の社長にするために。

 あの人は1か月以内に出来なければ社長になれないって言った。

 だから、もし、あの人との間に子どもが出来なければ私はまた別の人とすることになる。

 そんなの、嫌だよ。あの人と一緒になるのも全部嫌…。

「…神野くん…」

 首に付けられたままのネックレス。必死に取り戻したそれを握りしめる。

 神野くんに会いたい。
 抱きしめてほしい。
 傍にいてほしい。
 名前を呼んでほしい。

 会いたい。会いたいよ…。

「神野くん…助けてよ…」

 お風呂に浸かったまま泣き声を噛み殺す。

 のぼせるのを感じてお風呂から出て長袖と長ズボンに着替える。下着もちゃんとつけた。でも、こんなことしても無駄だってわかってる。

 なんだか疲れてしまいました。

 さっきまで使われていたベッドで寝るのは気持ち悪いけど、せめてでもシーツを取り換えて横になりました。

 本当に自由なんて何もない。

 全く知らない男の人に抱かれないといけない。その人の子どもを作らなきゃいけないなんて、なんでそんなことしなきゃいけないの?

 悔しいのに体は疲れ切っていて、泥のように眠ってしまいました。