1人ぼっちと1匹オオカミ(下)


「目を覚ましたようだな」

 入ってきたのは父親でした。
 ドアが閉まる直前、廊下にはスーツ姿の人がいるのが見えて、逃げ切れないと分かってしまいました。

 父親は私の目の前まで来ると、何も言わないまま私を見下ろしてきました。

 でも、何も言いたくなくて私も黙っています。

「…死んだと思っていたが、生きていたとはな」

「…」

「何不自由ない生活はさせてやる。このカタログの中から好きな物があればいくらでもいえ。数日のうちに用意する。食事は自分で作りたいなら食材を用意しよう。作るのが面倒なら、うちのシェフに作らせる。服は見たか?お前が寝ている間にサイズは測ったから問題ないはずだが、好みに合わないなら…」

「何も、何もいりません」

 それまで流暢にしゃべり続けていた父親の声が途切れる。

 機嫌が悪くなるかもしれない。でも、いいや…。