「目を覚ましたようだな」
入ってきたのは父親でした。
ドアが閉まる直前、廊下にはスーツ姿の人がいるのが見えて、逃げ切れないと分かってしまいました。
父親は私の目の前まで来ると、何も言わないまま私を見下ろしてきました。
でも、何も言いたくなくて私も黙っています。
「…死んだと思っていたが、生きていたとはな」
「…」
「何不自由ない生活はさせてやる。このカタログの中から好きな物があればいくらでもいえ。数日のうちに用意する。食事は自分で作りたいなら食材を用意しよう。作るのが面倒なら、うちのシェフに作らせる。服は見たか?お前が寝ている間にサイズは測ったから問題ないはずだが、好みに合わないなら…」
「何も、何もいりません」
それまで流暢にしゃべり続けていた父親の声が途切れる。
機嫌が悪くなるかもしれない。でも、いいや…。


