生徒会の仕事で遅くなり、外はもう薄暗く星空が美しく見えていた。
携帯のデジタル時計を見ると7時を過ぎている。
「ちょっと遅くなっちゃったな…。急いで帰らないと……」
そう思いながら下駄箱へ行き靴を履き替え玄関から出ようとした。
「ぅー…寒い……」
最近気温の変化が激しいせいで、日中暑いくらいだったのがこんなに寒く感じられた。
すると、玄関の水道のそばに携帯をいじっている一人の人影があった。
生徒かと思ったが、今日はどこの部活も休みで居るのは私くらいのはずだ。ならば先生だろうか。
そう思い、玄関を出ながらチラリと横目で相手の顔を見た。
するとその人は先生ではなく…
「え?…秋君?」
「あ、仕事終わった?お疲れ様。」
そう言って携帯を鞄の中へ突っ込み、人懐っこい笑顔を向けてきた。
彼は神崎秋君。私よりも一つ年上の彼氏である。
「どうしているの?!」
「どうしてって…居たら駄目だった?」
そう言って軽く首をこてんっと傾げる秋君。
「駄目じゃないけど……。どの位待ってたの?」
すると秋君は私の心配をよそにいつも通り明るく答えてきた。
「んー。あんまり待ってないよ?俺もさっきここ来たばっかだったし。……ん、ほら帰ろう?」
そう言いながら手を差し出してきた。
「え?」
「ほら、早くー。」
秋君は手を繋げと言わんばかりにと手をさっきよりも近くに差し出してきた。
「あ、うん…//」
こういう恋人らしいことはまだ慣れなくて照れてしまう。ほっぺがじんわりと熱くなっていくのが分かった。
「照れてるの?…可愛い~」
ニヤリとイタズラな笑みを見せて笑う君。
「て、照れてなんかっ……て、あれ?」
「どうしたの?」
「なんか、冷たくない?」
秋君の手はやけに冷たかった。まるで、寒い外にずっと居たかのように……
「秋君。ちょっとしか待ってないって嘘ね?」
すると彼は唇を尖らせ、顔をぷいっと私のいる逆方向へと向けた。
「う、嘘じゃないし…」
「嘘でしょ?じゃあ何でこんなに冷たいの?」
「……えっと…ドライアイスに、手、突っ込んだから…?」
「いやいやいや?!そんなことしたら低温火傷で真っ赤に腫れてるよ!?というか何?最後の疑問系?!無理があるよ?!」
内心もっとましな言い訳はなかったのか?って突っ込みしそうになってしまった。