「 好 き 」

「ねぇ、なづ」



「んー?」



帰り道、あたしは部活が終わった光里と一緒に帰っていた。



駅のホームで電車をまっている時、
光里が不思議そうな顔で問いかけて来る。




「なんか良いことでもあったの?
さっきから、鼻歌うるさい」




「えっ⁈
そんなに鼻歌うるさかったかな⁈」




あたしは光里の腕を掴んで、必死にどれくらい⁉︎と聞いていた。



「やっぱり、良いことあったんでしょ」



うーん。
良いことって言えるのかな?あれは…


葵くんと話しただけだしなぁ…



「えっと…光里を待ってる時にね、
葵くんがあたしの特等席に座ってたの。図書室の」




「へぇ…それで?」




「小鳥遊 菜月っていうんでしょ?って言われて…どうしてあたしの名前知ってたんだろーっていうのと、話せたなーっていう気持ちがあるから、かな?」




素直に全部話すと、光里は何か不思議そうな顔をしながら半信半疑で聞いてくる。



「まさかとは思うけど…
なづ葵くんのこと好きなの?」




「はっ⁈
何言ってんの‼︎
そんなんじゃないから‼︎」




葵くんのことをあたしが好きなわけがない‼︎



ただ学校の王子様と話せたことが、ただ嬉しかっただけ‼︎
なんなのもう…光里は…



「ふ〜ん?」



「な、なによ…」




まだ怪しい顔をしている光里を無視して、線路の方に顔を向ける。



そうすると、あたし達が乗る電車がちょうどホームに入ってくるところだった。




「まっ、頑張んな‼︎
もうちょっとで気づくはずだからさ」



「え?何が?」



あたしの肩を叩きながら、
光里は電車のドアが開くと同時に、そそくさと乗ってしまう。



「あっ待ってよ、光里〜‼︎」




頑張って って何を?
もうちょっとで気づくはずだからさ って何に気づくの…?




さっぱり、分からない………