「 好 き 」

【なづSide.】


葵くんの言葉を頭の中で思い出しながら、あたしは教室までの廊下を歩いていた。


「期待しちゃ、ダメなのに…」


『俺も好き』



こんなこと言われたら、本当にあたしの事を好きみたいじゃん。


教室について、あたしはガラっとドアを開けると、そこには__________



「あれ?須崎くんだけ?」


「小鳥遊…?」


自分の席に座っていた須崎くんは、
すごく驚いた顔をして立ち上がった。


教室内は須崎くん以外いないっぽい。
二人ともどこ行っちゃったの…?


「あのさ、須崎くん!」


「ん?」


「光里と美咲ちゃん見てない?」


廊下を見たりしながら尋ねる。



「いや、俺も今来たとこだし…
そんときにはもういなかったけど」



「あ…そっか。ごめん、ありがとう」


自分も席に戻ろうとする。
って、須崎くんの隣なんだった…。



「あのさ、小鳥遊」


「ん?なに?」


「小鳥遊は、園田が好きなんだよな…?
園田以外…興味ないんだよな…?」


突然の質問に、あたしはイスに座ろうとしていた手を止める。


「…なんで?」


「深い理由はない」


「……」


あたしは答えられなくて、その場にうつむいてしまう。


「答えろよ…」


苦しそうに話ながら、須崎くんはあたしに話かける。



「なぁ、こっち向けよ…」



あたしはゆっくり上を向く。
でも、須崎くんと目は合わせられない。


なんとなく、怖い…。



「なんで目、合わせてくれないの?」


「っ………」


その言葉を言われたとき、あたしはパッと須崎くんの目を見た。


「小鳥遊…、俺…」



「…………」



「小鳥遊が、園田しか好きじゃないのは分かってる。だけど、俺…中学の頃から好きなんだ…」



「え…?」



うそ、あたしのこと好きって…
何かの冗談でしょ?

須崎くんも、女子から人気の人で
告白されても断ってるって聞いてたのに、どうしてあたしに告白するの…?



「信じてくれないの?」


「ちがっ…!そんなんじゃ…」


「でも疑ってんじゃん」


「………っ」



どうしよう、なんて言えばいいの?



「そんなに信じてくれないならさぁ…」


須崎くんは静かにあたしに近づいて、
肩を掴まれる。


あたしは怖くて後ろに下がった。


「やっ…!須崎くんっ!?」


「…………」


抵抗もしてるのに……

何も返事しないで須崎くんはあたしにどんどん近づいてくる。


そして、窓にドンッ…と突き飛ばすと、
もっと距離を縮めて顔と顔の距離が近くなる。



「やだ…、やめてよ、須崎くん…っ」


そんな静止の声も聞こえていないのか、
須崎くんはあたしに………


キスをした。



「…ごめん」


腕を掴まれたまま窓に押し付けられた状態で謝られる。


あたしはガタガタ震えながら、静かに涙を流す。


なのに、こんなときにも浮かぶのは…


「葵くん…助けて…っ」



葵くんに助けを求める声だけで。


須崎くんの事なんか、もう考えてもなかった。


でも、もう葵くんは帰っちゃって_____


「2人とも何してんの?」


須崎くんが驚いた様子で後ろに振り向く。



この声________


「園田…」


やっぱり、葵くんだ………
でも、どうして?


帰ったんじゃないの…?


すると須崎くんはあたしの腕から手を離して、ちゃんと葵くんに向き直った。


すると、葵くんはあたし達の教室に入ってきて、あたしたちの目の前に立つと、冷たい目をして須崎くんを見ている。



「小鳥遊さんに、何した?」


「…っ、なんも」


どうして、そこで嘘つくの……?!



「何もしてなかったら泣かねぇだろ。
小鳥遊さん、コイツに何された?」


突然問いかけられる。
でも、この場で言っちゃっていいのかな


でも、あたしは被害者みたいなもんだよ??


言ってもいいよね……


そう思ったそのとき。



「キスした」


「…は?」


「俺が、無理やりキスした」



須崎くんが、本当のことを話した。



でも、葵くんはなんだか怒っていて。
さっきから何か…別人のように思える。


口調もいつもみたいな感じじゃないし、
それに、耳になんかキラッと光るものが………



「お前…小鳥遊さんの気持ちも考えねぇでキスしたのかよ」


静かに怒っているのが分かる。
あたしは怖くなって、ズルズルとその場に転びそうになるけど、何とか耐える。


「園田…ごめん」


「謝るのは俺じゃねぇだろ」


「……。
小鳥遊、ごめん。怖い思いさせた…」


「っ………」



フルフルと首を横に振ることしかできなくて、あたしはまた静かに涙を流す。



すると今度は、須崎くんが話を始める。


「園田、変わったな…」



「は?」



「中3の頃の園田と全然違う。
ピアスも…染めてた髪の毛も、全部元通りだし。口調もさ、今中3の頃の口調出たし…隠してたんだろ?」



「……は、なんでそんなこと」



「それには理由あるんだもんな」



形勢逆転。
須崎くんがどんどん葵くんを責める。


ていうか、何の話?
中3?


あたしは話について行けず、ちんぷんかんぷんだった。


すると、葵くんはため息をついて、
静かに左耳を見せた。


「…葵くん?」


「俺、今でもピアスしてるけど。
髪の毛はさすがに戻したけどさ」



さっき光ってたのは…ピアス?


なんだかあたしは驚きすぎて、
言葉を失った。