「 好 き 」

「小鳥遊、さん」



話したことのない女子だったから、いつも通りに接するわけにもいかない。
第一印象を崩されたら最悪だ。



「先生が職員室に来るように言ってたよ。今すぐ来いって」



表情を変えない…
そんな言葉が似合うかな。


小鳥遊さんの第一印象は、
肩まで伸びたフワッとした髪の毛に、
目はクリクリしてて可愛い。
俗に言う美人。可愛い人。



この学校には結構かわいい人は多いけど、小鳥遊はダントツと言ってもいいほど可愛かった。



「あ…そっか。サンキュ」



あまり顔を直視できなくて、俺は視線をそらしながら廊下にある窓の外を除きながら話す。



「あの…」



そしたら、突然話しかけられて。
俺はビックリしたけどちゃんと反応する。



「園田くんと仲良いあの男子と同じクラスなんだけどね、すごく感謝してたよ!
さすが葵だーって!」



「はっ⁈
翼がそんなこと…」



「本当だよ?…最初は避けられまくってショックだったけど。とも言ってたけど…何かあったの?」



「あ、いや…なんも」



そこまで言っておいて翼の奴…。
なんだよ、俺を人気者にしやがってよ…



「園田くん、変わったねぇ…」



「え?」



急にそんなことを振られる。
どういう意味だ…?


変わったって、俺が…?



「女の子との事…いい加減だったのに、最近じゃ断ってるみたいだし。クラスの女の子が泣きながら話してたよー?」



“どうして?” とでもいいたげな顔をして俺に訴えてくるその吸い込まれそうな瞳に、俺は……


その場しのぎの言葉しか出てこない。



「俺にも、いろいろあったから」



いろいろって、なんだ。
翼をいい加減に傷つけて終わっただけ。
俺が変わるなんて無理な話なんだって思ったのに…。



「そっかぁ〜!
そりゃ園田くんにもいろいろあるよね。うんうん。」



「………」



勝手に一人で答えを出して納得して。
すごく面白い人なんだな、って思った。
表情もクルクル変わるし。



だって最初は、無表情な人。っていう印象だったのに…今じゃ表情豊かな人。に変わってしまう。



会って少ししか経ってないのに、
人の印象ってすごく変わるもんなんだな………



「って、すっかり話しちゃったね!
ごめんねっ」



慌ててそう言う小鳥遊さんは、その場を離れようとする。



でも………



「っ…待って!」



「…え?」



「クラス…何組?」



「3年2組!
園田くんは5組だよね?」



「あ、うん…知ってたんだ」



「そりゃ知ってるよ〜人気者だしっ。
って本当に時間やばいよ!先生怒っちゃうよ〜」



せかせかと俺を急かす小鳥遊さんに、俺が恋をしたのは一瞬で。



そのあと何回か小鳥遊さんを見かけたけど、話しかけることができなくて。


そのまま卒業した。



でも………



「葵くん…」



図書室で小鳥遊さんに話しかけられた。


何年ぶりだ……
1年か…?



ずっと想って来た。
俺と同じ高校に小鳥遊さんが来てるっていうのは翼から聞いてたから…。


俺の1年も前からの片想い。
それに気づく様子のない小鳥遊さん。
なんて不自由なんだ…。


あの時の中3の頃の俺なら、猛アピールして今頃付き合っていたかもしれない。


でもそれが今できないのは。
偽りの関係が出来ているからというのと、中3の時の俺が、今の園田葵だってことを小鳥遊さんに知られたくないから。



隠し通して来たんだ。
だったら最後まで隠し通す…。



「恋も自由にできないのか、俺は…」



一人で呟いた声は空に吸い込まれて行った。



【 葵Side end. 】