「 好 き 」

「今日も図書室で私の部活終わるの待ってる?」



今は、放課後。


あたしの日課は図書室で勉強して帰ること。



その時に、光里の部活が終わるのを待ってから一緒に帰ってるんだ。




「うん、今日も光里のこと待ってるよ
だから図書室行く」




「わかった〜
じゃあ、部活終わったらLINEするから、ちゃんと反応してね‼︎」



「わかった〜」



そう告げると、あたしはリュックを持って図書室に向かう。



******************


「失礼します…」



人が少ない図書室に、あたしは挨拶しながら入る。



いつもの席は、図書室の奥の方で
窓からオレンジ色の夕日がさすところに座っている。



でも、たまーにそこに人が座ってることがあって…座れないこともあるんだよねぇ〜…



「今日は誰もいませんように…」



1人でボソッと呟くと、
あたしはいつもの席に向かう。



「……っ⁈」



あたしは、いつもの席を見てビックリした。



だってだって……




「…葵くん」



「……?」



あっ、どうしよう…‼︎
声に出しちゃった‼︎



…って、いつもあたしが座ってる席に
葵くんが座ってる…



「えーと、ごめんなさい…
なんでも、ないです…」




視線を横にずらしながらあたしがそう喋ると、葵くんはあたしから視線をズラす。




「そっか」



そっか、それだけでも…あたしは葵くんと会話をしたんだなぁ…




多分、美咲ちゃんも莉子ちゃんも、葵くんと話したことないんじゃないかな?



だとしたら、あたしスゴイなぁ…




こんな学校一のイケメンな人と、会話しちゃったんだから…




「あの…さぁ」



「は、はい?」



あたしがまた葵くんに視線を戻すと、
葵くんはあたしのことを見ずに話している。




「…いつもここで勉強してるよね」




「え?」




あたしが葵くんにまっすぐ視線を移すと、葵くんも不意にあたしに視線を戻す。




「小鳥遊 菜月…っていうんでしょ?
いつもここで本読んだり勉強したりしてるよね」




「…あたしの名前知ってるの…?」




葵くん、どうしてあたしの名前知ってるんだろう?




「もちろん、知ってるよ」




そうやって微笑んだ葵くんから、
またあたしは目が離せなくなってしまって…




なぜか、胸がポカポカしていた。