あの日、ついポロっと告白してしまったあたしは、葵くんから逃げるように元に戻ろうとしたんだけど……



急に腕を掴まれて、あたしは葵くんの方に無理やり向かされることになった。


結局は葵くんも何も言わずにあたしの元から去って行ったんだけど。



「あたし、何言っちゃったんだろ…」



こんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてかもしれない。

そんな事を思いながら、あたしは教室への道を急いだ。



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「遅いじゃんなづ」



「あ、あはは〜…ちょっと色々あって」



さすがにさっきの事は言えない気がして来た…。
あんなの、あたしが言うだけ言って恥ずかしい思いするのはあたしだからね。



「てか、顔真っ赤」


そう言ったのは、いつの間にかその場所にいた光里。


「え、顔そんなに赤い⁈
ど…どうしよう…」



バレたらどうしよう…!!



「なづ?どした?」



「へっ⁈
な、ななな何がっ⁈」



やばーいーー!!!
めっちゃテンパっちゃってる…!

こんなんじゃワケありだってすぐ分かっちゃうじゃんか!

バカだあたし!!



「なんかあったんでしょ」



はい、来たー!
あたしの予想した通りですよ



「な、なんも⁈
なんもないよ⁈」



「いやいや、あるよね?
ってかなづキャラぶれすぎ(笑)」



「あたしのキャラってなんだ……」



いやいや、分かってますよ。
テンパってるだけでこうなってるだけ。



「やーっぱりワケありだね
そんなに私らに言えないことなの?」



急に真剣な顔をしながら話してくる美咲ちゃんに、あたしはなにも言えなくなっていたたまれなくなった。



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「ってことがあったの…」



「…恥ずいね」



「…だよね…」



さっきまでの経緯を話して、光里も美咲ちゃんもニコニコしてた。


…引きつってたけど。



「まぁ、なんとなく話は分かったよ
つまりは、ついポロっと好きって言っちゃったってことだよね?」



「そうなります…」



「そうなると…
葵くんは完全に勘違いしてることになるよね…」



「うん…あたしが好きだと思ってるわけでして…って本当どうしたらいいんだろ⁈」



バン!と机を叩きながらその場に立つと、美咲ちゃんと光里はビクッとしてからあたしにそーっと微笑んだ。



「誤解だーって言っておけば?
今のなづなら言える気がする」



「わたしもそう思う」



二人してなにを言い出すんだ…っ!
そんなことあたしが言えるわけ……



「言えるわけ、ないじゃん…」



しょぼしょぼとその場に座り込むと、なんだか泣きたくなって。



「あたし、本当は葵くんのこと好きで堪らないのに…でも、こんな変な形で知って欲しくなかったっていうか…」



光里も美咲ちゃんも二人して考えてくれてるのに、あたしばっかり二人に頼ってばっかりでいいのかなー……



「だから尚更否定しておけばいいじゃん!そんで後からちゃんと自分の気持ちがまとまったら告ればいいじゃん!そんで振られたらいくらでも慰めてあげるんだから!!」



「光里…」



「そうだよ!
誤解されたままでいいの?
本当の気持ちを伝えるまでに、否定しておかないと、後が辛いじゃん!」



「美咲ちゃんまで…
うん、そうだね…ちゃんと葵くんに言ってくる!!それに、あたし…変わろうと思う」



「そうだよ!言って来な!…って変わるってなにが?」



「あたし、もう自分の気持ちに嘘ついたりしない!
正直になる!莉子ちゃんが何だ!彼女だからってなんだよ!!そんなのあたしには関係ない!…ってね!」



二人ともポカーンとした顔をして、あたしを見てくる。



「そうだね、そうしな!」



そうやって2人があたしを見送ってくれるから、あたしは……



「うん、行ってくる!待ってて!」



それだけ伝えると、あたしは教室を飛び出した。