「 好 き 」

莉子ちゃんと、美咲ちゃん大丈夫かな…
そんなことを考えながら、あたしも教室へと足を進めていた。



本当は今日…
光里に謝るはずだったのに、光里は何てことのない顔をしてあたしに話しかけて来てくれた。



莉子ちゃんも、美咲ちゃんも、あたしたちみたいになれれば良いんだけど…


って言っても、あたしも傷つけること言ったから謝らなきゃいけないんだけど…



階段を上って、教室へと続く廊下を歩いていると、話し声が聞こえて来た。



「なんだよ、須崎」



「話があんだよ。
いいから俺についてこいっての」



階段のところの角から顔を覗かすと、
そこで話をしていたのは、葵くんと須崎くんの二人だった。



盗み聞きをするのは良くないけど、なんだかすごく気になってしまってあたしはその場所から動かずに会話を聞いていた。



「着いて行くって…ここでいいだろ」



はぁ…というため息とともに、葵くんは須崎に話しかける。



すると、須崎くんは少し考える素振りを見せてから納得したようで、その場所で話をすることになったらしい。



「園田と、菅浪のことなんだけど」



「…なんだよ」



「菅浪がいるなら、小鳥遊で遊ぶのやめてくんねーかな。園田はそれで良いかもしんねーけど、小鳥遊はダメなんだよ」



小鳥遊、という名前が出て、あたしの体はビクッと揺れる。



どうして、あたしの名前を…?



「なんでそんな事須崎に言われなくちゃいけないわけ?」



少しだけ機嫌を損ねてしまった葵くんは須崎にダルそうに質問をする。



「それは言えない」



「じゃあ尚更、関係ないだろ
それとも何?須崎は…小鳥遊さんの事が好きなわけ?」



「…っ」



須崎くんが何も言えず、その場に立ち尽くすと、葵くんは目を見開いて怪訝そうに須崎くんを見つめ直した。



やだ…何この空気…。
二人の間にはすごく重たい空気が流れている。



あたしはその場所に立っていられなくて、離れようとした。



その時_____



「須崎にとって、小鳥遊さんが俺と関わって欲しくないなら関わらないけど…けど、俺だって…」



そこまで言うと黙り込んでしまう葵くん。



どういうこと…?
なんでそこで黙るの…?



「…それって」



「須崎なら分かるだろーな…」



思いつめた顔をした葵くんは、下を向いてしまう。



「…悪い、俺が聞いた内容がダメだったな」



須崎くんは申し訳なさそうに葵くんに謝っているけど、あたしには全く話が見えて来ない。



「いや、いいよ
須崎は何も悪くないし」



フッと笑うと、葵くんは黙って目を伏せた。



「じゃあ…そろそろ行くわ」



それだけ言うと、葵くんは須崎くんの肩にポン…と手を置いて歩き出してしまう。



でも………



「…園田っ!」



「…ん?」



「俺はこんなこと言える立場じゃねーけど…頑張れよ!」



「っ…おう」



そう言うと、須崎くんも微笑んで葵くんも微笑んで二人はお互いに違う方向に歩き出す。



そこで、あたしは気づいた。



「あ、葵くん…こっち来る…⁈」



どうしよう、隠れる場所なんて………



そう焦ってるうちに…



「「あ」」



お互いの声が重なった。