「 好 き 」

学校に着くと、ガヤガヤしていて
なんだかいつもよりうるさい。



「なんでこんなにうるさいんだろ？」



あたしは不思議に思って、
人だかりができている場所に歩いていく。




そこにはスクープ写真とデカデカに綴られた新聞記事。



「あれ、この先生って…」



「あたしも思った…うちらの担任の先生と…４組の担任？
まさかデキてたってこと？」



光里がそうあたしに話しかけてくる。
たしかによ〜く目を凝らして見ると、あたし達の担任と４組の担任。




「やっぱりなぁ〜前から怪しいとは思ってたんだけど」



光里が1人でつぶやく。


でもここまでしなくても……。



そう、なんとキスしている写真がスクープとして生徒玄関のところに貼ってあったんだ。



それでみんなが溜まって行ったんだね…
可哀想に先生達も。



好きに恋愛出来ないなんてさ…。



すると、そんな時。



「お前ら、何見て…」



「おっ来たぜ変態教師！」



どっかのクラスの男子が先生をおちょくる。



「って、このタイミングまじないよね」



「うん…ほんと先生気の毒」



周りの女子達が騒ぐ中、先生だけがすごく悲しそうな顔をして立っていて。



もう見ていられないあたしは、みんなに静止の声をかけようとした。



その時____



「くだらな」



「…？」



声のした方を見ると、そこには葵くんが立っていて。



みんな驚いて葵くんを見る。
誰1人声を出そうとはしない。



「今すぐこの新聞はがしなよ」



冷たい目で葵くんは周りの人たちにそう話かける。



「な、なんだよ園田！
お前にはカンケーねーだろ！」



「あぁそうだけど。
だったらお前も同情してるお前らも先生の恋愛なんてカンケーねーだろ？」




「…それは」




言われた男子は何も言えなくてお手上げ状態。



すごいなぁ、葵くん。



あたしの胸がまたキュン…と音を立てるのを感じている中、先生に葵くんが歩み寄ってくのがわかる。




「先生もするならするでバレないとこでしなよね。俺らにも先生にも迷惑かかんだからさ」




ニコッと笑ってから新聞記事をはがすと貼った本人であろう人に新聞記事を突きつける。



「もうこんなくだらない真似やめなね」



冷たい笑顔で言うと、葵くんは深呼吸してからみんなにいつも通りの笑顔を向ける。




「みんなもう教室行った方がいいよ
あと5分でみんな遅刻決定」




時計を指差しながら無邪気に笑う葵くんを見て、女子は顔を赤らめる。



あー。
やっぱりみんな思うよねぇ、うん。




「ギャップ萌え…」




「ちょ、なづ⁈
戻ってこーい！」




すると、その声に反応した葵くんがあたしに気づくと軽く手を振る。



振って良いもんなのかと分からずにあたしはとりあえず振り返すと、ふと葵くんの視線が一部に集まるのを感じた。



「 か み の け き っ た ん だ ね 」



口パクでそうつぶやく葵くん。



笑顔を見せてから、もう周りにあたし達以外全然残っていない生徒玄関で



「似合ってる」



そう言って葵くんはその場を後にした。