「 好 き 」

空き教室に二人きり。
沈黙が流れる。



二人きりっていうのがあまり無いから
気まずい……。



でも、そんな気まずさを解いてくれたのは、須崎くんだった。




「…俺さ、真っ直ぐ正直にぶつかるヤツってバカだなってずっと思ってた」




突然の言葉。



さっき須崎くんが正直にぶつかれって言ってたのに………。




「正直にぶつかって、なんの得があんだよって。傷ついたらどうすんだって…ずっと思ってたんだ。その時の俺は」




「…うん」




「だけどさ、素直になることって本当に良いことなんだよ。言えないことをずっと秘めておくより、言った方が楽になるってこともあんだって思えたんだ」




“ある人のお陰で”




そう最後に呟いた須崎くんの横顔は
儚くて切ない表情をしていた。




あたしは何も言えなくて……。




「そっか…」




それだけのことしか言えなかったけど、
須崎くんは優しく笑って




「頑張れよ」




そうやって言ってくれた。