「 好 き 」

「光里〜」



放課後がやってくる。
今日は久々に委員会もないから、あたしは図書室で部活が終わるのを待つことにした。



「あ、なづ!」




あたしに気づいた光里は、
自分の席からあたしの方に近づいて来る。




「今日も部活でしょ?
あたし、図書室で待ってるね」




「ありがと〜」



「じゃあ、それだけだから!」




あたしは光里と話をやめて、自分の教室に戻ろうとする。



すると………




「小鳥遊さん!」




「……?」




光里の方に振り返ろうとしたら、
あたしの視界に葵くんが…入って来てしまった。




「あ…園田くん…」




「ごめん、急に名前呼んで」




「いや、大丈夫…だよ」




極力顔を見ないように、あたしらうつむきながら話す。




だって、葵くんの顔を見たら
莉子ちゃんまで浮かんで来るんだもん。



そんなの絶対に嫌だ!!




「今日、図書室…「小鳥遊ー」」




「えっ?あ、はーい!」




教室から、須崎くんに呼ばれてしまったあたしはオドオドしてどうしようかと悩んでいた。




それに察してくれた光里が、
葵くんに何かを話すと、葵くんは少しムッとした顔をしてから



「じゃあ俺行くね」



そう言って、自分の教室に入って行ってしまう。




「あ……」




「小鳥遊、早く戻ってこいってば!
これから席替えだっ…て…」




須崎くんが近寄って来るのは分かってるんだけど、あたしは葵くんから全然目が離せなくて……。




「…小鳥遊?」




「あ…須崎くん、ごめん戻ろっか」




無理やり作った笑顔は、
少しだけ引きつっていたかもな。