「 好 き 」

_____ガラガラっ‼︎



図書室のドアが勢い良く開く。



「あ、…園田くん」



なんていうタイミングなんだ……。



あたしは本人の前では葵くんと呼ばずに
園田くん、と呼んだ。




「ご、ごめんなさい…っ」




さっきの話聞かれてたかもしれない、って思ったらあたしはその場所にいられなくて、莉子ちゃんを押しのけて走り出した。




ドンッ‼︎



「あっすいませんっ」




誰かに激突したあたしは、
急いで謝る。




「って、なづ?
どうしたの?」




「光里と、美咲ちゃん…」




「部活終わったから帰ろ?」




そう言って光里はあたしに手を伸ばして来る。




あれ?
なんで美咲ちゃん居るんだろう?




「美咲ちゃん、バイトは…?」



「あーえっとね、今日はバイトなくてさ〜シフト間違えてたみたい」




そう言って頭をかく美咲ちゃん。




「…あっ‼︎
莉子ちゃん………」




図書室のドアを開けようとした時、
葵くんが動揺を隠しきれないような顔で図書室から出てくる。




「…葵くん?」




あたしは葵くんが歩いて行くところを
ずっと眺めていた。




その時、あたしの心に芽生えた感情はもう誰も言わなくても分かっていたことで。




「…そっか」



「え?」




あたしは、小さく呟いた。




「莉子ちゃん…。
莉子ちゃんの言う通りだよ、あたしは
葵くんに恋してたんだ………」





気づくのが、遅かったね______





葵くんのあの動揺した顔の理由を、
あたしが知ることになるのは、今から5日後の事だった。