「 好 き 」

「で〜どうなの?」



「はっ?」



「葵くんのこと〜…
気になっちゃってたり…するんじゃないのっ?って聞いてるの〜」




今は昼休み。
あたしと莉子ちゃんと美咲ちゃんでお弁当を食べている時、美咲ちゃんから突然聞かれた言葉。




「だから、何回も言ってるでしょ?
葵くんのことはどうも思ってない」




何回否定しても懲りないのか、二人は同じ質問を何回も何回も繰り返して来る。




「ちぇ、つまんないの〜」



「でもさ、なづ」



「なーに?」




「これだけは言っとくけど、
後から好きだって気付いた時…もう遅かったってことあるかもしんないんだから、気をつけなね?」



真剣な目で莉子ちゃんは、あたしに話しかけてくる。




「ありがと。
だけど心配しないで?
好きになったりしないからさ」



「そ?なら、いいんだけどね」




「よし、食べ終わったし移動教室の準備しよ〜‼︎」



「……………」




そう言いながら、あたしは次の移動教室の準備を始めるために、お弁当箱を袋に仕舞う。




「あれ?2人とも、準備しないの?」



「え?あぁ…するよ」




莉子ちゃん、なんか様子変……




「莉子ちゃ…」




「なづー」




急に名前を誰かに呼ばれたので、
教室のドアに目を向けると、光里が立っていた。




「光里」




「ちょっと〜
科学の教科書貸してって朝言ってきたのに…忘れてたの?」




「えっ?
あ…って次科学だ‼︎」




あたしは急いで走って光里の元に向かう。




「ごめん〜
ありがと‼︎」




「いいよいいよ
もーなづってばおっちょこちょいだよね〜」




「ひどいな〜」



「…っと…もうあたし達行かなきゃだから。なづ、美咲、行くよ」



「あ、ちょ莉子ちゃん待ってよ‼︎
ごめんね光里‼︎
今日も部活終わるまで待ってるね〜」




「あ、うん‼︎」




「……じゃ」




最後に莉子ちゃんが光里に挨拶してから廊下を歩いていったけど、なんかあったのかな…?




あまり、いい雰囲気とは言えなかったし。




ま、まさか………




「ケンカ⁉︎」




「…は?」




「光里と、莉子ちゃん…
ケンカでもしたの?」




あたしが真剣な顔で言うと、
莉子ちゃんは一瞬びっくりした顔をしてから、急に俯いた。




「え?ちょ、莉子〜?」




美咲ちゃんが心配して莉子ちゃんの顔を覗き込むようにして話しかける。




「っあはは‼︎
はぁ〜…ケンカなんかしてないから
安心しなよ〜」




そう言いながら莉子ちゃんはケラケラ笑った。




「そ…っかぁ。
なんだ、よかった〜」




あたしがそう言うと、莉子ちゃんはニコッと微笑んでいた。