【旅と私とフカフカクマ】




窓側の方向を覗きこんだから、まぶしい光が視界いっぱいに飛び込んでくる。


思わず目を細めて、ぼやけた輪郭が整っていくのをしばらく待った。


すると、視界の端に小さなクマの後ろ姿。


フカフカクマは、まだベッドの上にいた。


そこから背伸びして窓枠に手をかけ、外の景色をそっと眺めている。


頭上には、全ての闇を吹き飛ばしてしまうんじゃないかってくらい、焼けるような熱を放った太陽が白く輝いている。


雲一つだって、見当たらない。


だけど、フカフカクマの背中はどこか淋しげで。


その思いが私の無感情に近かった心に染み渡るように、何かが溶けていった。


そして、グラグラと底から沸き上がるような感情が、姿を現した。



――なんで私、外に出られないんだろう。


全身をかきむしりたくなるような、居心地の悪い、怒りの感情。


無性に、腹が立ってきた。


外の世界から、逃げ出してきた自分に。


色々な事を、諦めてきた自分に。


毎日、廃人みたいにベッドに横たわっている自分に。


周りに迷惑をかけ続けている自分に。


色んな、沢山の、どうしようもない自分に。


――ああ、もうっ!!


私は勢い良く布団を蹴り上げると、ガバッと体勢を起こして声を張り上げた。


「行くよ!行けばいいんでしょ、行けばっ!」


もう、やけくそだよ。



数秒して、フカフカクマがゆっくりと振り返る。


「だけど、一つだけ聞きたい事がある。今日が終わったら、これからもまた動けない日々がずっと続くんだよ」


人間の世界に踏み込めば踏み込むほど、戻った時の反動は、きっと大きくなる。


「その辛さに耐えられるの?それでも、いいの?」