「お願いだよお、ボクにはユウコちゃんしか頼れる人がいないんだよお〜」
ポコポコと叩かれている感覚が、布団越しからかすかに伝わってくる。
ちっとも痛くはないし、むしろむず痒い。
「一度でいいから、外の世界を見てみたいんだよ、お願いだよ……」
懇願するフカフカクマに、何かが揺れ動きそうになったけど、脳内で頭を左右に振って制御した。
そんな事言われたって、無理なものは無理なんだよ。
瞳を閉じて、早く眠気が来ることを願う。
だって、私ぬいぐるみと喋ってるんだもの。
ひどい幻覚と幻聴のダブルパンチなんて、相当ひどい精神状態なんだわ。
「ボクには、時間がないんだよお……っ!」
悲痛な叫びが、狭いフローリングの部屋に響く。
フカフカクマの声が、震えている。

