外には危険がいっぱいだ。白い視線の、宝庫だ。


身体は横になったまま、傍にあった姿見に視線を向ける。


能面のように、表情が欠落した女と、目が合った。


その瞳には覇気がなく、もう少しで何かが崩れてしまいそうな、どこか危ういオーラが漂っている。


ロングの黒い髪はベタついていて、前髪は岩場に張り付くうねった海藻のよう。


目の下の隈も、ゾンビとひけをとらない。


ただ、見ためのそれとは比例して、眉毛だけはゲジゲジと存在を主張するように生い茂り、生命力に溢れていた。


しばらく鏡を見ない間に、すっかりホラーな雰囲気になったもんだ……。


はぁ。


人間とはかけ離れた自分の姿に、もう溜め息しかでてこない。


きっとお化け屋敷にいても、すぐに溶け込むことが出来るだろう。


というか、そこら辺の特殊メイクお化けの方々よりもお客さんを絶叫させる自信すらあるわ。


落胆というよりも、もはや諦めの境地。


自分を自嘲できるまで、私は落ちぶれてしまったのだ。


「悪いけど、他を当たって」


ただ外出するだけでも億劫なのに、ぬいぐるみを連れて外にでるなんて、今の私には通報ものだよ。


現実から目を反らすように寝返りを打つと、視界からフカフカクマを遮るように布団を頭まで引き伸ばした。