『いつまでも布団の中で寝てばかりじゃ、あっという間に人生終わっちゃうよ!』
視線を真横に向ければ、太陽の光に反射してキラリと光る円らな瞳が二つ、こちらを見ていた。
輝かしいその瞳の持ち主である、やたらフカフカした小柄なクマは、どんよりとした私の視線などお構い無しに曇りない天使のような空気を身に纏いながら、優しく、囁く。
『お外に出ようよ?毎日おうちにいたってつまらないじゃない
お外にはね、キラキラしたものが、たぁくさん転がってるんだよお』
フカフカクマは、両手を広げ頭上を見上げた。まるでその空間から粉雪が舞ってくるのを見てはしゃぐ子供のように、無邪気に。
――確かに、素敵なものは沢山あると思うよ。でもね、それ以上にね、お外には危険がゴロゴロ地雷みたいに埋まっているんだよ……
おどろおどろしく言う私に、フカフカクマはふるる、と体を縮こませる。
――私は、どうも鈍くてさ。気付いた頃には、色々と遅かったんだ。もうね、動く気力もわいてこないのよ
投げ遣りに、覇気のない声で呟く。
『でも、ここにいたら時間は止まったままじゃない。その間にも、世界は動いているんだよ。本当は、ユウコちゃんもそろそろ前に進まなきゃいけないと思ってるんじゃないの?』
言い訳する私に、容赦のない言葉が突き刺さる。フカフカクマは首を傾けこちらを見ていたが、やがて何かを決意したようにすくっと立ち上がった。
『ねぇ、何もすることないなら、これからボクをお外につれていってよ!』
――えっ……
突然の提案に思考がフリーズする。
色んな意味で、言葉に詰まった。