「じゃあ…ADは…」


「セックスホルモンを身体から全滅させる薬」



それは知らなかった。

ADは、増えすぎたセックスホルモンを標準に戻すのではなく…全滅させていた?



「まって、じゃあ…私のお姉ちゃんが人形になったのは…」

「…………恋にかかってしまった姉がいるのね。その人は感情をなくしただけよ。もう、あのような辛い思いをしないようにね。セックスホルモンと一緒にね。」


わけがわからなくなってきた。

じゃあ、セックスホルモンは増えない?

セックスホルモン自体が恋の正体で。私たちはセックスホルモンと一緒に生まれてくる。



「それじゃあ…この世にいる全員が…恋にかかる…ってこと?」



そうと言って欲しくなかった。でも、願いは届かなかった。

先生は、「そうよ」と静かにつぶやいた。