「いえ、天野くんと呼びます。おろしてください!私は…大丈夫です」
「観客席に座ってたときから気分良くなかったんだろ?だからトイレに行こうとしてたんじゃないの?」
ーーーえ…。
天野くん…見てたの?
ていうか、観客席からフィールドにいる天野くんを見つけるのさえ難しいのに…
フィールドにいる天野くんは、観客席にいる私を…見つけてくれたの?
「でも…一人で…」
「心配なんだよ。あの日も、貧血気味で倒れそうになったしね。だから、送っていくよ」
そう言って微笑む天野くんに、私の胸はまた高鳴った。
私は彼の制服を手で握りしめた。
