その時、ふっと視界に入った"その人"は列の前の方に並んでいた。
背が高くて、スラッとしてイケメンの中にはいるだろう、その人は真面目そうに参考書を読んでいた。
綺麗だ。私は素直にそう思った。
綺麗だと言っても、女の子の綺麗じゃない。制服もしっかり着ていて、真面目で。そんな印象だ。
「いっ…た!」
思わず声を出してしまったのは、次の瞬間だった。
急に左の胸が痛んだのだ。
初めての感覚に私は思わず顔をしかめた。
周りの人は私の様子には気がつかなかったようだ。
それはそれで良かったと思う。
でも、私自身は怖かった。
どうして急に胸が苦しくなったんだろうか。
なにかの…病気なの?
