ホワイトデーの奇跡【完】



          ◇



とうとう、バレンタインデーを目前にしていた。

私は、材料とラッピングをお母さんと買いに行った。

特設コーナーを歩く中、私よりもはしゃいでいたのは、お母さんだった。






「これ、かわいいんじゃないかしら?」


『ちょっと、かわいすぎないかなぁ?』



バレンタインデーにチョコを手作りするのは、あれから一度もなかった。

なんとなく、あの頃の気持ちを思い出してしまうのが嫌で。

市販のチョコを買って、たまちゃんや友達と交換していた。






「武藤くんには、この袋がいいんじゃない?」




お母さんが差し出してきたのは、大きなハート柄の手提げ袋。



『……武藤くんはただの友達だよ。それじゃあ本命みたいでしょ』



お母さんは、武藤くんが好きだから。

武藤くんに渡すのも、友達に渡すのと同じ。



そんな私を、つまらなそうにお母さんは見てきたけど気にしなかった。