ホワイトデーの奇跡【完】



「…ねえ、さくら…あのさ」


『たまちゃん…今日、予定変更しよっか』


「…」


『桜橋、行こう』


「えっ…」



桜橋は、街の中を細く流れる川にかかる小さな橋のこと。

川を挟んだ芝生の斜面には大きく育った桜の木が1本植えられてある、小さな河川敷。

正式な名前はないけど

いつの日からか、街の人はそこを桜橋と呼ぶようになった。



『今日は、天気も良いし…芝生でごろごろしよっか』


「…でも」



ローファーに履き替えた私は、たまちゃんの手を掴んだ。



『ほら、ね…行こう』



たまちゃんは元々、私よりもずっと繊細で、傷つきやすい子だった。


あの日、もしかしたら

私よりも深く傷ついたのは

たまちゃんなのかもしれないって思うこともある。



『近くの100円ショップでレジャーシート買っていこうよ』


「…うん」



たくさん悲しい顔をさせてしまった分、たくさんの笑顔が溢れるように。

強くなるからね。

高校生になって、何度つぶやいたかわからない決心を

私はもう一度、心の中でつぶやいた。