「蒼井、」
『っ…!』
突然、後ろから手が伸びてきたから。
確認するよりも先に、体が気配を感じて反射的に伸びてきた手を避けれた。
自分でも驚く程、俊敏な動きだったと思う。
「…消しゴム、蒼井のだろ」
そう言って、落としていた消しゴムを差し出してくれた彼
武藤圭(むとうけい)くんは、そんな私の動きにもう慣れたのか。
何ともないような表情で、ほらと差し出してくる。
『ぁ…う、うん……ありがとう』
武藤くんは私の後ろの席。
窓際の一番後ろの席の彼は、たまちゃんと同じくよく寝ている。
「なんかそれ、甘い匂いする」
武藤くんは
たまちゃんとクラスの女の子の次に私が話せる、ある意味特別な人。
