「あっ、やば。朝、担任に呼ばれてたの忘れてた」
『アルバイトのことだったよね?』
「うん。ちょっと行ってくるわ」
『うん』
「なんかあったらケータイに」
『何もないよ。大丈夫』
たまちゃんが職員室に行って戻ってくる数分間で、何もないと思うのに。
でも1年生のときは、こういう時でも必ず私もついて行ってたから。
ちょっとは進歩してるのかもしれない。
「いいから」
たまちゃんは、私と一瞬でも離れることがあれば必ず同じことを言う。
“なんかあったらすぐケータイに”
心配してくれて、嬉しいのに…。
口癖にさせてしまったことを、心の隅で申し訳なく思う自分もいた。
『わかったよ。行ってらっしゃい』
恋人以上、親以上に私を思ってくれるたまちゃん。
私だけじゃない。
あの日のことを引きずってるのは、私だけじゃない。
だから、自分の以外の人のためにも早く普通にしなきゃって思うのに…。
