ホワイトデーの奇跡【完】



教室に着くと、たまちゃんは早速宿題を移し始めた。

私の前の席がたまちゃん。

後ろを向いて、私の机で無言でシャーペンを走らせていく。



「意味わかんない。さくら、何でこんなのわかんの」


『うん?授業を聞いてるからだよ?』



たまちゃんみたいに授業中寝てないからだと思うけど…。



「ふわふわしてるくせに、意外と何でも器用にこなすよね」



ガクッ……ふわふわって。

確かに、たまちゃんみたいに素早くはないけど…。



「あたしは無理。出来ないって思ったら即やめるね」


『ふふっ…たまちゃんらしいね』


「そのへん、さくらすごいよね」


『ん?』


「出来るまで諦めないっていうか、見た目を裏切る根性の持ち主だよね」


『…それ、褒めてるの?』


「当然」


『そっか…ありがとう』


「素直すぎてむかつく。その笑顔もかわいくてむかつく」


『えええ!?』


「嘘だよ」


『……うう~いじわる』


「あはっ」



たまちゃんは、学校では滅多に笑わない。

というより、感情が表に出にくいポーカーフェイス。

でも私といるときは声を出して笑うから、みんなびっくりしてる。

その姿を見れば、たまちゃんが近寄りがたい人だなんて全然思わない。