その晩、修二さんから、提案があった。

正式に、公の場で、私を婚約者として発表したいと。

・・・正直、迷った。修二さんの事は大好きだし、修二さんのご両親も、私を受け入れてくれてる。今すぐにでも結婚してもいいとすら思う。

・・・でも。

公の場で、私が婚約者だと言う事を発表した時に、好奇の眼差しが怖い。…元々、人気のあった修二さんと結婚するとなると、周りの女子社員達の行動が怖い。

そう思うと、自然と体がこわばった。

「・・・大丈夫、俺が、麗美を守るから」

修二さんはそう言ってくれたけど。


・・・修二さんの提案に、賛成して、発表すると、案の定、周りはこれでもかっていうくらい、騒ぎ立てた。

結婚したら、海外事業部の部長は、晶に一任される。…それまでは、私が部長のまま。

仕事がとてもやりにくくなった。…女子社員達の、私を見る目が一変した。

「・・・大丈夫か、麗美?」

移動中、晶にそんな事を言われ、私は、作り笑いを浮かべる。

「・・・大丈夫に決まってんじゃない。私を誰だと思ってるの?」
「・・・」

「私は、大丈夫だから」
「…自分に、言い聞かせてるだけに聞こえるぞ」

…ズバリ言われ、思わず足が止まる。

「・・・ば、バカ言わないで」
「お前、相当、苛められてるだろ?」
「・・・」

…誰にも、気づかれていないと思ってた。