黙ったまま萩原を見据えていると、ため息をついている。

「…大学時代、付き合ってましたよ。もう、何年も前の話しです。…新條社長と麗美の関係は?」

…今萩原は、俺を社長としてではなく、一人の男として問いかけているのはすぐに分かった。

「…お察しの通りですよ」

そう言って、微笑んで見せる。…本当は、嫉妬で今にも殴り倒してしまいたい衝動を必死に抑える。…付き合ってたのは何年も前の話し。…だが、麗美が素直な感情を出している事に、嫉妬してしまう。

自分以外の男に、そんな顔を見られたくないという独占欲。麗美と付き合うようになって、その気持ちが、益々大きくなっている。

…自分でも、驚く程の、嫉妬心と独占欲。俺にも、こんな感情があった事に、麗美に出会うまで、知らなかった。

「…心配なさらなくても、奪ったりしませんよ。今、俺と麗美は、上司と部下と言う間柄なんですから…でも」

真剣な眼差しで俺を見た萩原。

「…麗美を傷つけたり、泣かせるような事をしたら、放っては置けませんから」

「…萩原君、君」

まさか、まだ、麗美の事…

「好きですよ…それでは、俺はこれで…麗美が心配してしまうでしょうから」

そう吐き捨てて、萩原は帰って行った。