「…そうですよね。…うん、自分でするべきですよね」
「・・・・」

そんなシュンとした顔をされると、私が苛めてるみたいに見えるじゃない。

…ほら、他の女子社員達が、私を睨んでいる。
私は小さく溜息をつくと、

「分かりました。いつまでに仕上げればいいですか?」
「…出来れば、今日の昼一には」

パッと、明るい顔になり、そう言って微笑んだ藤岡部長。

…今日の昼一?!

相当な仕事を抱えていると言うのに、これを、昼一までに仕上げろと?
怪訝な顔をして、藤岡部長の顔を見つめた。

「お願いしますね」

ニコッと微笑まれ、言い返す気力を失った。

「…優しい仮面をかぶった鬼ね」

小さな声で、もちろん誰にも聞こえないようにそう1人ボヤいて、デスクに着いた。

…とりあえず、自分の仕事は後回しだ。私の仕事は、夜までに仕上げれば、十分に間に合う。

…このホンワカ上司のおかげで、私はいつも、残業をする日々。

たまには定時に帰ってみたいものだ。

…なんて、定時に仕事が終わったところで、家に帰っても何もする事はないのだけれど。

・・・仕事にかまけて、友達も2,3人しかいない。

そのうち二人は、結婚して子供もいる。急に会えるなんて無理に等しい。

もう一人は独身だけど、彼女も、私と同類で、仕事ばかりで、休みもろくにない。