…最近、どうも、無表情が崩れ気味でいけないと、自分を戒めた。

「有藤さん、ちょっとお願いがあるんですけど」

気を取り直して仕事を始めるも、藤岡部長に呼ばれて、席を立った。

「お願いと言いますと?」

…締切まじかのお願い事は、勘弁してほしい。

「…この会社、新規の取引先なのは知ってますよね」
「…はい、担当者が、確かフランスの方ですよね」

「そうなんですよね。僕、英語は話せますけど、フランス語はちょっと・・・」

…嫌な予感がする。

「だから?」

無表情に、問いかける。

「僕と一緒に、来てほしんですよね、通訳として」
「・・・」

・・・やっぱり、そう言う事。

ここは、海外事業部だ。海外の人たちと話をする事も多い。

私は英語とフランス語の勉強をしていたし、半年はそれぞれ一か国ずつ留学もしていた。

・・・でも、フランス語なら、他にも出来る人、いそうだけど。

「…私意外には、いませんでしたか?主任と部長が二人も抜けると、何かあった時は困りますよ」
「そうなんですけどね。…生憎、フランス語が出来るのは、有藤さんしかいないんですよ。それに、僕たちが抜けてもいい様に、主任の下には、各チーム、リーダーがいますしね。大きなトラブル以外なら何とかなるでしょう」

・・・そんな事を言われると、断る理由が何もない。

「・・・わかりました。…午後からでいいんですよね」
「はい、助かります」